【特別インタビュー】宗大選手と雄太選手が語る野球留学とは・・・

2012年7月17日(火)の朝日新聞(関西版)で、カナダ高校野球留学中の宗大選手と雄太選手が特集されました。

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<以下記事全文>



【海外留学 僕ストライク】

あいさつに声出し、先輩への服従・・・・。日本はとかく、窮屈だった。

カナダに来て、驚いた。年上だってファーストネームの呼び捨てだし、監督への反論もOKだ。

内外野を覆う天然芝。照明がないのに、試合開始は午後6時。6月26日の北緯49度はまだ、昼間のようだ。周囲の樹林の上に現れた虹を背に、星宗大(18)がライトの守備についた。

ブリティッシュコロンビア州バンクーバー近郊に留学したのは、2010年秋。高校生チーム「ブルージェイズ」の入団テストに、一発で合格した。チームは、州に三つある高校生リーグで実力トップとされる「プレミアリーグ」(13チーム)に所属する。

さっそく11年の最初のシーズンで10勝を挙げ、チーム最多勝利投手に。優勝時の胴上げ投手にもなった。

「うちで最も才能のある選手。日本人にどんどん来てほしい」。ヘッドコーチのジェリー・ホワイト(52)は称賛を惜しまない。

だが、そんな星も日本ではさんざんだった。

「おはようございます」 

「全然、聞こえねえ!」

09年4月。星は、埼玉県内の強豪校で、新入部員約40人と何度も発声練習を強いられていた。

「意味、わかんねえ」 

腹が立ったが、辞めるわけにはいかない。甲子園を目指して入った野球部だ。だが、感情がすぐ顔に出るせいか先輩ににらまれ、ノックと称して至近距離から硬球をわざと打ちこまれるいじめをうけた。

星も、やんちゃだった。けんかや悪い授業態度が重なり、09年11月、監督から退部を言い渡される。

目標を失い、仲間と街をぶらつく息子に留学を勧めたのは父親(46)だ。借金までして年300万円超の学費を作ってくれた。

「カナダは僕に合っていた」。帰国を控えた星は、満足そうだった。

星が6月26日に対戦したチームにも、留学生がいた。投手の菊崎雄太(17)。やはり甲子園を目指して埼玉県内の強豪校に入ったが、精神的に耐えられず、昨秋、カナダに留学した。

チームでは、しばらく、監督にほとんど話しかけなかったという。「新入りが監督に直接話すなんて恐れ多いし、先輩に怒られる」。そんな感覚が染みついていたのだ。

ある日、監督が不思議そうに聞いた。

「お前、なんでオレに話しかけない。オレが嫌いか」

やっと、日本のような上下関係がここにはない、と気付づいた。

2人の留学をあっせんした「BBC」(東京)には、米大リーグ志望の中学生からの問い合わせが、今年だけで10件近くある。日本で進学せず、最初から海外の高校を目指すのだ。

日大藤沢校(神奈川)を不登校で中退、渡米してメジャー昇格直前の3Aまで行った独立リーグ徳島インディゴソックスの内野手・根鈴雄次(38)はいう。

「日本では野球以外に興味を持つ時間は少なく、厳しい上下関係や暴力が残る一方で、挫折したら立ち直れるチャンスは少ない。もっと選択肢があっていい」 =敬称略(白木琢歩)

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取材は、ちょうど「直接対決」が行われた日でした。経験した二人だからこそ分かち合える野球留学の素晴らしさ、そして感動。

「自分らしさ」を追及できる野球がそこにはあるのでしょう。